あなたは仕事において、事業や製品について分析を行ったことがありますか?
事業や製品について分析をする手法は様々ありますが、その中の一つにPPM分析があります。
PPM分析は、Product Portfolio Managementの頭文字をとったもので、事業管理の手法です。
自社の行っている製品または事業を、市場の成長率と相対的なマーケットシェアから、花形商品、金のなる木、問題児、負け犬の4つのポジションに分類し、それぞれに見合った事業展開を検討するものです。
事業展開を適切に行うためにPPM分析を活用する時に、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか?
PPM分析を有効活用する5つのポイント
仕事において、事業管理は必要なことであり、この管理を適切に行うためには、事業そのものや製品などについて状況を知ることが必要です。
そのためには客観的に状況を分析することが求められ、PPM分析の手法は有効な方法です。
このPPM分析を有効活用する5つのポイントをご紹介します。
1.PPM分析の前提条件を知る
PPM分析では、市場と商品・サービスの法則的な定義を行っています。
PPM分析の一つ目は、どんなに成長性のある商品やサービスであっても、時間の経過と共に市場が飽和してその成長率は鈍化していくというものです。
PPM分析の二つ目は、一般に成長性の高い事業で高いシェアを獲得しようと思えば、投下資金を大量に必要とするものです。
PPM分析の三つ目は、規模の経済効果で、市場シェアの高い企業は市場シェアの低い企業よりも高い収益率を実現することができるというものです。
1960年代にアメリカのビジネス社会では、企業の巨大化・多角経営化が進み、大企業の経営判断として、複数の事業の最適なバランス配分を分析するための『事業ポートフォリオ分析』が求められるようになってきたことが背景となって、PPM分析は生まれてきました。
PPM分析の目的は、複数の事業のバランスの良い組み合わせを作って中長期的な利益の増大・損失の縮小を目指すことになります。
先行投資する価値のある事業、継続投資する価値のある事業、早期撤退したほうが良い事業、投下した資金回収を目指すべき事業など、複数の事業の中長期的な展望を描いて、それぞれの事業の最適なバランス配分を考えていくことに適した手法がPPM分析であることを知っておくことが大切です。
また、前提条件が現代の事業形態に見合っているのか、常に留意することは忘れてはなりません。
なぜなら、事業手法や環境の変化に伴い、先にあげた3つの前提条件は必ずしも現代のビジネスシーンと合致するとは言えなくなっているからです。
2.市場成長率の予測を行う
PPM分析では縦軸に市場成長率をとり、横軸に相対マーケットシェアをとり、正方形を分割して4つのエリアに分割してマッピングをします。
円の面積を売上高として、製品群別に円を描き、円は重なっても構わないものとします。
縦軸の市場成長率の境界線は、一般的に10%とするのですが、市場成長率10%以上は上段、10%以下は下段に、売上高をあらわす円の中心点を配置して表していきます。
この時の市場成長率は、将来の3〜5年先を予測することが求められるのですが、現状の成長率に惑わされないよう十分に注意することが必要です。
つまり、将来予測を怠れば、間違った判断をすることに繋がってしまうのです。
将来の予測が適切にできればよいのですが、これがとても難しいことは言うまでもありません。
3.業界での位置づけをつかむ
PPM分析の横軸の相対マーケットシェアは、業界1位を左側、業界2位以下を右側に売上高の円の中心点を配置することになります。
PPM分析の相対マーケットシェアとは、業界1位は、業界2位の何倍の売上があるかで、倍率が高いほど左寄りになり、業界2位以下は、業界1位の何分の1なのかを考えます。
売上高が少ない方が右寄りに記されることになります。
そして製品群ごとに市場成長率と自社の相対マーケットシェアの位置を中心とした円を描き、売上高の大きい製品ほど大きな円を描きます。
このようにPPM分析をマッピングすれは、現在の製品構成、売上高、シェアを一目で見ることができるのです。
このマッピングを行うためには、自社の市場における位置づけを適切に理解していることが重要なポイントになってきます。
4.経営資源の対象を絞る
PPM分析のマッピングが完成すれば、それぞれの製品が自社にとってどのような貢献をしているのかを分析します。
4分割した左上のエリアは花形商品の製品群となります。
花型商品は成長率が高く、マーケットシェアも高いことを意味しており、このような製品群に対しては経営資源を集中し、業界優位な立場を死守し、売上の拡大をめざすべきと判断するべきと言えます。
花形商品は市場成長率が高く、業界トップレベルなのですが、先行投資もそれに伴い多いので、利益は余り期待できません。
売上も急成長して収入も多くなっているのですが、それ以上に設備投資や研究開発費の先行投資で支出も多いのが実態です。
しかし、成長分野において業界上位を守るためには、先行投資を抑制すべきではありません。
そのため、PPM分析において市場成長率が低くなると予測されるのであれば、先行投資を減らして行くべきものです。
逆に業界上位を死守していれば、いずれ大きな収益をもたらすことに繋がっていくのです。
5.PPM分析の限界を知る
PPM分析にも限界があり、経営環境やその会社のコアコンピタンス(強み)について全く触れてはいません。
また製品や事業間のシナジー(相乗効果)なども分析の対象外となっています。
その他にも、ブランド力の確立により、業界2位以下でも、確実に収益を上げている企業も多く存在しているのも事実です。
PPM分析の結果が実際の経営の意思決定に適用されるにつれ、わずか3つの指標(市場成長率、シェア、売上高)での分析だけでは、限界があることは明白な事実となっています。
しかしながら、PPM分析は現状分析の手法としては優れた機能性を発揮します。
漠然と経験・勘・度胸で議論を繰り返すより、PPM分析のマッピングを用いれば、定量的な事実に基づいた議論が可能になります。
また現状の事業領域を再構築するための基礎資料として、重要な役割を果すことができることを忘れてはなりません。
まとめ
いかがでしたか。
PPM分析を活用する際には、その手法の特徴を理解しておくことが大切です。
なぜならせっかくPPM分析を活用しても、的確な結果を導き出すことができなくなってしまうからです。
現代の複雑な市場形態において、事業領域などの再構築の際の基礎資料として有効活用しましょう。
PPM分析を有効活用する5つのポイント
- PPM分析の前提条件を知る
- 市場成長率の予測を行う
- 業界での位置づけをつかむ
- 経営資源の対象を絞る
- PPM分析の限界を知る