役員会議で会社の経営方針を決める際に「それは戦術レベルの提案」などと言われて、一瞬戸惑ったことはないでしょうか?
戦術と戦略の違いは曖昧に使われることがあります。この二つの言葉の違いを明確に理解していないと、経営方針を決める会議で戦略の話をするべきときに戦術の話をしてしまうことになるのです。
とはいっても戦術、戦略どちらも経営にとってなくてはならないもの。意味さえ理解していれば適切な使い方ができます。戦術と戦略の意味の違いとはどのようなものでしょうか?
目次
戦術と戦略の意味の違いと活用法
会社の事業計画や経営方針を決める際には、戦術、戦略という言葉が飛び交います。この二つの言葉の使い分けができていなければ、綿密で実行力のある事業計画は立てられないでしょう。今回は、戦術と戦略の意味の違いと活用法をご紹介いたします。
1.戦略は目的
戦略を立てるとは、目的地を決め、進む方向を決めるということです。経営方針や事業計画ではまず、どのような事業をするかを決定する必要があります。その事業により収益が上がり、自社の強みが活かせるようなものを考えなければいけません。「どのような事業か」というのが戦略です。
たとえば開発事業部の戦略でしたら、「スマホアプリ市場に参入する」であったり、「ゲーム開発部門の新設」などが戦略にあたります。
2.戦術は手段
これに対して戦術とは、戦略を立てた後に、どのようにしてそれを実現するかというものになります。戦略が目的であれば戦術は手段です。目的地と方向性を決めたら、あとはたどり着くための方法が必要になります。
「人員をどれくらい配置し、誰と誰をアサインしてチームを動かすか」などです。
3.戦略はポジション決め
戦略では、自分の企業が業界においてどの位置にポジショニングするかという点を決めることも大事になってきます。競合の分析や市場調査なども戦略レベルで行われることです。
これは既存の事業でも新規事業でも同じですが、特に新規事業を考えるとわかりやすいでしょう。まず戦略を正確性を持って立てなければ、いざ走り出したものの競合に負けてしまい撤退なんてことも考えられます。
戦術と戦略を分けて考えるのは、プロセスでの時系列的な違いが大きく、戦略を立てながら戦術も同時に検討することは、事業規模が大きいほど非効率なことが多いからです。まず「ここならいける」というポジションを決定してから戦術を考えることが大切です。
4.戦術はポジショニング作戦
ポジションをどこに定めるかが決まれば、次はポジショニングをどのようにするかという戦術を考える段階に入ります。自社がすでに持っている技術をどのように活用するか、新たに人を雇い、ポジショニングするのに有利な技術を得るかなどを考える必要があるでしょう。他者と事業提携する可能性もあります。
戦術がぶれるとポジショニングがうまくいきませんので、戦術についての決定事項は、作戦実行部隊全員に周知徹底する必要があります。
5.戦略を立てるのは指導者
見てきたように、戦略は大局的なものなので、これを決定するのは指導者的な立場にいる人です。国家レベルの戦略であれば総理大臣です。もちろん下位組織からの意見はくみ取りますが、最終的な決定は戦略に対して責任がとれる立場の人間が決定します。
戦略に沿って、大局的な視点で、どのような組織、技術、人員が必要かを決めて、各役割をアサインします。
6.戦術を考えるのは実行部隊
役割ごとにアサインされた実行部隊において、それぞれの目標を達成するための戦術を考えます。各実行部隊ごとの戦術ができるでしょうし、上位組織の実行部隊を束ねるための戦術も必要なので、戦術は多くの場合で一つだけとは限りません。
細部の技術については、現場でしかわからなかったりしますので、実行部隊が全体の方向性を理解して目的達成のための戦術を立案し、実際に進めます。現場や技術をよく理解した実行部隊の責任者が考える戦術が、戦略通りに進める上で非常に大事になります。
7.戦略と戦術どちらが大事か
「戦術と戦略どちらが大事か」という話になると思いますが、もちろんどちらも必要で優劣つけがたいものです。
戦略ありきの戦術なので、戦略におけるビジョン、展望といったものがまずキッチリと作られなければ、戦術がどんなによくても間違った方向に進み、事業としては失敗してしまいます。そのような意味では戦略の持つ意味は大きいです。
逆に、ビジョンの話だけがしっかりとあり、それを実行する方法が手薄なものであることも起こりがちです。戦略が理想的すぎて現場との温度差がある場合など注意が必要です。ビジョンの実現は戦術次第とも言えますので、戦術を考えることは難しいですが、問題解決能力の試される、重要事項になるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?戦術と戦略はどちらも重要ですが、まったく別の性質のものだということが理解いただけたかと思います。
明確に意味を使い分けなければ事業計画自体がぼんやりして実行力のないものになりますので、きちんと区別して活用しましょう。
戦術と戦略の意味の違いと活用法
- 戦略は目的
- 戦術は手段
- 戦略はポジション決め
- 戦術はポジショニング作戦
- 戦略を立てるのは指導者
- 戦術を考えるのは実行部隊
- 戦略と戦術どちらが大事か